美容師が年をとったら?45歳~65歳のスタイリストに働き方を調査
「美容師は40歳前後から、キャリアを続けるのが難しくなる」という情報が、巷には溢れています。しかし実際には多くのスタイリストが50歳、60歳になっても、活き活きと美容師の仕事を続けていらっしゃいます。
今回は「美容師は年を重ねたらどうなるの?」というテーマで、45歳~65歳の現役スタイリストの方に「年を重ねてからの働き方」や「年齢を重ねたからこそのお悩みと対処法」等について教えていただきました。
美容師は40代から続けづらくなる?年を重ねた美容師の実態
ネットで調べると「美容師(とくに男性)のスタイリストとしての寿命は “ 40歳前後 “ まで」という内容をよく目にします。
ただし、実際のところは50代、60代になっても現役でスタイリストを続ける方もいれば、裏方としてサロンの経営をされる方、その中間など様々なスタイルで美容師業界に携わり続ける方は数多くいらっしゃいます。
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なぜ「美容師の寿命は40代」と言われるのか?
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今回、45歳以上の現役スタイリスト(or 美容師オーナー)の方に取材を協力いただく中で、「美容師が40代前後でキャリアを終える」という説の背景を分析してみました。
【美容師の寿命が40代前後と噂される背景】
- ・以前は「男性美容師は40代前後でハサミを置く」という風潮が、実際にあった。
- ・若い世代が活躍するサロンで、年配美容師が働き続けるのは精神的にしんどいから。
- ・美容師の多くは、より小規模なサロンやベッドタウンの個人サロンに移動するため、目に付きづらくなる。
- ・ハードワークで、歳を重ねると体力的に負担が大きいから。
- ・そもそも美容師自体が転職・離職率の高い職業であるため。
スタイリストは年齢を重ねるに連れ、都心部にある若者向けの美容室は居心地が悪くなるといいます。理由としては「客層が若くて話があわない」「従業員が若く、比較されるのが辛い」「自分より若いスタッフの部下として働くのが辛い」「精神的に落ち着かない」などが挙げられます。
そうなると多くの美容師は地元の小規模サロンや、地域密着型の店舗に自然と移動するため、客観的には「年配の美容師はどこへ行ったのだろう?」という見え方になりがちなのです。
また美容師自体が、そもそもの転職・離職率が非常に高い業界であることも「美容師が年齢を重ねると辞めやすい」とされる理由の1つでしょう。厚生労働省の「産業別入職率・離職率」調査によれば、1年目で約50%、3年目で約80%が転職・離職するとも言われています。
年をとった美容師は、どんなキャリアを歩んでいるの?
実際のところ、年令を重ねた美容師はどのようなキャリア選択をしているのでしょうか?45歳~65歳までのスタイリスト、計15名に話をうかがいました。
1.地元の地域密着型サロンで働く
調査の結果、地元へ戻り地域密着型のサロンで働く、というスタイリストが多数を占めました。自身がお店を開くパターンもあれば、正社員やパートとして雇われで働く場合も少なくありません。
民家の多いベッドタウンや人通りに少ない地方のサロンであれば、都市部に比べて客の年齢層も比較的高く、店舗の雰囲気も落ち着いている傾向にあります。自分と年齢の近いスタッフやお客様が多くなるため、余計な気疲れや話題が合わずに苦労する心配もなく働きやすいのだそうです。
大阪で例えるなら、高槻や茨木、東三国。兵庫なら明石や三田のような、少し落ち着いた住宅街のサロンが多い。
客層もそこそこ年配の方や小さなお子様連れの方が対象で、気軽に世間話のできるような立ち位置で美容師をサれている方が多い印象です。
2.自分のペースでサロンを運営
自宅の近くや地元で、個人サロンを経営するというベテランスタイリストもいらっしゃいます。「1日○名限定」としたり、週の半分程度だけ出勤したりなど、個人経営だからこその自由な働き方を実践。趣味の一環としてされている方もいれば、しっかり収益を目的に運営されている方まで幅広くいらっしゃいます。
ハードワークである美容師ですが働き方を工夫することで、年齢を重ねてもハサミを握り続けることが可能となります。
3.街ナカのサロンで店長・経営者を担当
今回の調査のうち、都市部でサロンのオーナーを務めている方も何名かいらっしゃいました。地域に限らず、年齢とともに現場から経営者側へ立場をシフトする美容師の方も多いでしょう。スタイリストで経験を積んだ後、独立してサロンを経営するというプロセスは、多くの美容師が検討したい人生設計の1つとも言えるでしょう。
完全に運営側に徹する方もいれば、自らも現場に立って施術を担当されるスタイリストもいらっしゃいます。
年をとった美容師に、実際の働き方を聞いてみた
60歳を超えても今なお現役でスタイリストを続けていらっしゃる、美容師さん2名の事例をご紹介いたします。「美容師は年齢を重ねても、本人の気持ち次第で続けられる」ことが実感できるエピソードです。
【事例1】年齢65歳、1日3名限定の個人サロンを運営する男性美容師 Aさん
※写真はイメージです。
地元で個人サロンを経営されている、65歳の男性美容師Aさん。店舗は完全予約制で、1日3名限定で施術をお受けしているようです。やや高価な価格設定をされているものの、長年の経験で培ったAさんの技術力を信頼している、気心の知れた方が顧客の大半を占めていらっしゃいます。
ご自身の働きやすいペースで、理解のあるお客様だけを担当されることにより、細く長く現場へ立ち続けたいとのこと。ご本人としては、生涯可能な限りハサミを握り続けたいとお考えのようです。
【事例2】年齢60歳、奇数日だけ出勤しながらサロン経営する女性美容師 Bさん
※写真はイメージです
地元で小規模サロンのオーナーを務める、60歳の女性美容師Bさん。30代~40代のスタッフ数名が在籍する、地域密着型の美容室を運営しています。基本的にはオーナー業に徹し、長い付き合いのある既存顧客のみ、ご自身で担当されていらっしゃるそうです。
奇数日だけ出社しながら、無理のないペースで美容室としての活動を続けていらっしゃいます。
また美容師という立場上、今なお見た目の若々しさをキープされているBさん。美を意識する仕事だからこそ、老いを楽しみながらもアンチエイジングへの対策や日々のお肌・スタイルのメンテナンスなどに気を配っていらっしゃいます。
美容師が年をとって感じる悩みと、具体的な対策
「美容師は年を重ねても継続できる」と先述したものの、他の仕事に比べ体力を消耗しやすい仕事であることも事実です。視力の低下や体力の衰えに伴い、若手時代と同様の働き方は難しくなっていくでしょう。
現役で活躍されているベテランの美容師に「年齢を重ねて感じるようになった悩みと、改善のための具体的な対策」についてお聞きしました。
1.視力が落ちて髪のカットがしづらい
調査した美容師の半数以上から、老眼により視力が落ちることで「細かい部分が見えづらくなる」という声が挙がりました。手元が覚えているため実際の施術には支障をきたさないものの、男性の刈り上げは細部が見えないと相当やりづらいそうです。
対策としては、少しレンズに色味の付いた「オシャレな老眼鏡」をかけているスタイリストさんが多いそう。また施術の際だけは眼鏡を外して、手元が見えるようにしている方もいらっしゃいます。
2.立ち仕事なので足腰がキツイ
年齢と共に「膝」「腰」「肩」の3箇所が特にきつくなるようです。営業中に痛みを感じることは少ないものの、帰宅後に気を抜くと一気に疲れと辛さが体を襲うとのこと。多くのスタイリストさんが「とくに50歳を過ぎたあたりから、痛みが強くなる傾向がある」とおっしゃっていました。
対策としては「スポーツジム」や「整体」にかよって、体力づくりや体のメンテナンスを心がけている方が多いようです。また不規則な働き方をせず、自分の体調に見合った労働スタイルを見つけることも大切でしょう。
3. 感覚が若い世代に追いつかなくなってくる
美容を扱う業界だからこそ、美容師はいくつになっても常に流行へ敏感であることが求められます。しかし年齢の離れたお客様を担当すると、少なからず好みや感覚のズレを感じることも少なくないそうです。
こういった悩みを解消するため、多くのスタイリストが今でもセミナーへ参加する、あるいは雑誌やネットを通じて流行をインプットする機会を設けています。常に新しいものを吸収し続ける姿勢は、いくつになっても美容師にとって必要な要素と言えるでしょう。
まとめ
「美容師が年を重ねたら」というテーマで、45歳~65歳までの現役スタイリストを対象にお話をお聞きしました。
今回の調査を通じて実感したことは「仕事とプライベートを楽しみながら両立させている」スタイリストが、非常に多かったということです。美容師として働くときはお客様とのコミュニケーションを大切に、プライベートでは友人や孫とキャンプや買い物を満喫するなど。「活き活きと活動する」ことこそが、スタイリストを現役で長く続けるための、大きな秘訣ではないかと思います。
もし現在「スタイリストとして将来どうしよう」と不安を抱えている方も、まずは「どうすれば自分の好きな仕事(=美容師)」として活動を続けられるか?という視点から、将来を判断してみると良いかもしれません。
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