美容師の面貸しとは?メリット・デメリットや給料相場について解説!フリーランス10名に調査
面貸しとは、フリーランスの美容師がサロンの一角をレンタルして、自分の顧客へ施術をする働き方のことです。店舗に雇われているわけではないので、お客様の受付からヒアリング、施術、予約連絡、薬剤の準備まで、すべての作業をスタイリスト自身が行います。一方でメニューの価格や労働時間、使用する薬剤の種類まで自己の裁量で決められるという特徴もあります。
「ミラーレンタル」とも呼ばれるこの制度は、海外ではごく当たり前の労働スタイルとして定着しており、日本でも近年注目を浴びる労働スタイルの1つとなりました。
まだまだ日本では数の少ない「面貸し」という働き方について、その働き方や仕組み、給与、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
【この記事がおすすめな人】
・面貸し、業務委託、フリーランスの違いを知りたい方。
・面貸しで働くメリット・デメリットを知りたい方。
・自分は面貸しに向いているかを知りたい方。
・面貸しの給料や契約について知りたい方。
・美容師として、将来の働き方を悩んでいる方。
美容師の面貸しとは?業務委託・フリーランスと何が違うのか?
「面貸し」「業務委託」「フリーランス」は、美容師の働き方として混同されやすいです。実際に3者の違いがよくわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
端的に言えば「フリーランス」とは「事業所に雇用されていない、個人事業主の状態」を指す言葉。「面貸し」「業務委託」は、それぞれ「個人事業主としての働き方」を示す言葉です。
・「面貸し」…独立しているスタイリストが、サロンの鏡1面をレンタルして、自分の顧客にサービスを提供する。あくまで「場所を借りている」だけなので、集客や備品の用意、メニューを決めるなどは、すべてスタイリストが自分で決める。
・「業務委託」…独立しているスタイリストが、サロンから業務を委託されて労働する。集客や備品購入は、店舗がまかなう場合が多い。またメニューなども、基本は店舗のものに従う。雇用契約より、休みの自由や雑務の軽減などが見込める。
・「フリーランス」…雇われでなく、個人事業主として独立した状態の働き方を広く指す。「面貸し」や「業務委託」も、フリーランスとしての労働形態の1つである。
ここ数年の間に美容師が「フリーランス」という働き方を選ぶことは、ごく自然なことになりつつあります。労働の多様性が浸透しつつある今だからこそ、今後ますます個人事業主として独立を選ぶ美容師は増えていくでしょう。
美容師で面貸しは儲かる?給料相場や店舗に払う賃貸契約料はどのくらい?
面貸しは儲かるのか?という問いに答えるならば「美容師の実力次第で決まる」という解答になるでしょう。
先述の通り、面貸しは「すべての集客を自分で行う」必要性があります。ある程度の固定顧客がおり、人気・実力が伴っているスタイリストであれば、サロンに雇用されている時代よりも高い給与を狙うことが可能です。
仮に「単価6,000円」の顧客を1日に7組、20日間労働したとすれば
⇒ 一カ月の売り上げ、84万円
という計算となります。
もちろんここから「店舗への賃貸料」「備品の購入代」「交通費」などを引くことになりますが、やり方次第で「月額30~60万」ほどの収入を得ることも可能です。
美容師から店舗への支払いは、どういった契約内容が多いのか?
面貸しが、店舗の鏡1面をレンタルする賃貸料の支払いは、どのようなパターンがあるのでしょうか?
現役10名の面貸し美容師にインタビューしたところ、以下の結果となりました。
【面貸しの契約内容について】
「月額制」で契約するサロンが全体の6割と多く、月初に決まった時間分でレンタルする「時間制」や、売り上げの何割かを支払う「歩合制」のパターンも見られました。
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大きな売り上げが見込めるのであれば「月額制」「時間制」が向いているでしょうし、売り上げが不安定な場合・大きな額が見込めない場合であれば、売り上げに比例して使用量を支払う契約の方が安心でしょう。
現役フリーランス美容師に聞く、面貸しで働くメリットとは?
面貸しには、リスクを背負ってでもなるだけのメリットがあります。現役のフリーランス美容師に「なぜ面貸しになったのか」「面貸しで働く魅力」を聞きました。
メリット① 人間関係に振り回されない
1つ目のメリットは「煩わしい人間関係に悩まなくていい」ことです。
必要最低限の職場づきあいで働ける面貸しであれば、人間関係による不要なストレスは軽減されます。すべての業務を一貫して自分で行うため、他のスタッフと関わる機会はほとんどありません。
・厳しい上下関係がつらい
・業務外での社員同士の付き合いが嫌だ
・人目を気にしながら働くのが煩わしい
こういった方は「面貸し」のようなフリーランスが、性に合うかもしれません。
メリット② 収入の目標が立てやすい
2つ目のメリットは「収入の目標が立てやすい」ことです。
面貸しであれば「メニューの料金」「稼働日数」「1日の接客数」すべてを自分で決められるため、稼ぎたい額にあわせて働く量を調整することが可能です。
実際に「独立して店を出すための資金調達」として、一時的に面貸しを選ぶスタイリストがいるのは「自分次第で稼ぎやすい」「期限と目標を決めて稼ぎやすい」という特徴があるためでしょう。
収入が自身でコントロールしやすいという点で、自分で自立して稼げるタイプであれば面貸しは魅力的でしょう。
メリット③ 顧客を納得いくまで接客できる
3つ目のメリットは「自分の顧客に時間をかけて対応できる」ことです。
通常のサロンであれば、シャンプーやトリートメントなどの施術はアシスタントが担当するのが一般的です。多忙なサロンであれば複数名を掛け持ちで対応しなければならず、大事な顧客を流れ作業的に扱うことも珍しくありません。
その点、面貸しであれば「お客様の受付」から、一貫してすべてを自分のみで、じっくり時間をかけて接客ができます。
・時間に追われた接客が嫌
・すべてのサービスを自分だけで提供したい
・指名をくれたお客様を大切にしたい
こういった方からすると、「お客さんを大事にしたいのに」というジレンマに悩まされることがなくなるでしょう。
メリット④ 時間や営業日数を自分で決められる
4つ目のメリットは「営業日や休日を自分で決められる」ことです。
面貸しを含むフリーランスの特徴として、シフトをすべて自己管理するという点があげられます。
・がっつり稼ぎたい月は、週6日稼働する。
・子供の迎えがあるので、17時まで稼働する。
・年に2回、ご褒美に1週間以上の長期休暇を取る。
こういった自由な動き方ができるのは、面貸しの大きな魅力と言えるでしょう。
現役フリーランス美容師に聞く、面貸しで働くデメリットとは?
面貸しには上記で述べたようなメリットがある一方、フリーランスならではのデメリットやリスクもあります。
デメリット① 収入が不安定になる
1つ目のデメリットは「収入が不安定になる」ことです。
「実力次第で雇用時代より稼げる」といわれる一方、雇われていたときには保証されていた「最低月給」の付与がなくなります。面貸しが収入面で懸念されるパターンとしては
・集客がうまくいかず、思うように稼げない
・ 病気や怪我で働けず、収入が0になる
・ボーナスなど、まとまった額の支給がない
・有給や育休と違い、休めば給与は発生しない
などがあげられます。
「先月は30万の収入だが、今月は10万しか無い」という事態が容易におこる世界です。先を見据えた収支管理・働き方ができないタイプであれば、面貸しを続けていくのは難しいかもしれません。
デメリット② 材料管理など雑務が煩わしい
2つ目のデメリットは「材料管理」など、本業以外の雑務が面倒なことです。
これまではサロン任せだった薬剤や備品の購入・準備・管理が、面貸しとなればすべて自身の仕事となります。
「お客様に自分のこだわりの薬剤を使いたい」「マメな雑務が気にならない」という方には問題ないでしょうが、細かい作業を面倒に思う人には負担になるかもしれません。
サロンの中には、使用料に薬剤や備品、光熱費の利用料金が含まれている契約の店もあります。
デメリット③ 税処理・手続き関係が難しい
3つ目のデメリットは「慣れない税処理や手続き」に苦労することです。
面貸しとして活動するためには「開業届の提出」をはじめ、これまで店舗が当然のようにしてくれていた保険料や税金の手続きなどを、すべて自分でまかなうこととなります。
【フリーランスが必要となる主な手続き】
・開業届の提出
・国民年金の手続き
・国民健康保険への加入
・年に1回の確定申告
・青色申告のための事前手続き
こういった作業は独立の際、誰もが初めて通る経験です。面倒な上にわかりづいらいため「ネットで調べる」「身近なフリーランスの人に教わる」「納税書等へ直接電話して確認する」などの手段を使って、トラブルにならない対処が必要です。
美容師で面貸しはどういう人がすべき?向いている人・不向きな人
メリット・デメリットでも語ってきたように、面貸しは「向いている人」「不向きな人」が明確に分かれる労働形態です。
以下の特徴を見て、自分が「面貸し」として活躍できる人材なのか確認してみましょう。
▼面貸しが向いている人
・自分で集客できる人
・お客さんの懐に入るのが得意な人
・自己プロデュースが上手な人
・独立の際に、ある程度「稼げる目処」が立っている人
・自己管理ができる人
▼面貸しが不向きな人
・集客力に自信がない人
・スタイリストとしてのキャリアが浅い人
・他人の指示に従う方がラクな人
・自分で勉強したり、情報を得るのが苦手な人
・自己管理が苦手な人
ずばり面貸しに向いている人は「お客さんを自分で集められる、自走できる人」です。本来は独立して店を持ちたいが、そこまでのリスクは負えないという人・資金が集まるまでの「繋ぎ」という人にも、面貸しは向いているでしょう。
一方で自分が店舗をやめてフリーになったとき「指名客が見込めない人」や「実力・キャリアに自信がない人」、「事務作業やお客さん対応など、細かい管理が苦手な人」は、少なくとも今時点では「面貸しは不向き」と言えるでしょう。
数年後に「面貸し」という選択をするとしても、現時点では同じフリーランスでも集客の必要がない「業務委託」を選ぶか、あるいは自分の希望と合致しそうな「別のサロン」に転職を考えるのがオススメです。
【まとめ】「面貸しになるか」は、自分の性格や将来像にあわせて検討しよう
「面貸し」は実力派のスタイリストならば、一度は視野に入れたい働き方です。実力次第で収入は青天井な上、時間の拘束や面倒な人間関係に悩まされることもなくなります。
一方で集客力や実力のない美容師であれば、面貸しという道を選ぶにはまだ早すぎるかもしれません。
将来的に視野に入れるとしても、まずは「今のサロンで実力を磨き、指名客を増やす」「同じフリーランスでも業務委託を選ぶ」「条件が自分好みの、別のサロンへ転職する」という選択をしてみれはいかがでしょうか?