美容師の業務委託とは?必要な手続きやメリット・デメリットを紹介
美容師の業務委託とは、サロンに雇用されるのではなく個人事業主として店舗と直接契約を結び、業務を委託されて報酬をもらう働き方です。近年の「労働の自由化」の煽りを受け、業務委託のようなフリーランスの道を選択する美容師は年々増えつつあります。
業務委託には「自由に働ける」というポジティブな一面がある一方で、金銭面や手続きにおける「雇われ美容師」にはなかった難しさ・リスクもあります。
今回は業務委託として働く上で必要な作業・手続きとともに、知っておきたいメリット・デメリットについて解説します。
美容師の業務委託とは?7割以上の美容師が「興味あり」
そもそも「業務委託」とはどういった働き方で「雇用契約」と何が変わるのでしょうか。
「業務委託」とはその名の通り、サロンから美容師業務を委託されその分の労働報酬として給与をもらう働き方です。あなたは個人事業主(フリーランス)として、サロンと対等な立場で契約を結ぶことになります。
雇用契約では事業所側のルールに応じた労働時間で拘束されますし、店舗によっては売り上げノルマを課せられることもあるでしょう。しかし「業務委託」であれば「契約内容」に盛り込まれていない限り、これらのルールに従う必要がありません。
「業務委託・フリーランスに興味はあるか?」の問いに、7割以上が「はい」と回答
「業務委託に漠然と関心はあるものの、実態はわからない」「行動に移せない」という美容師さんは多いでしょう。JOBOONでは、現役で働く雇用美容師20名に「業務委託についての意識調査」を実施しました。
<業務委託の意識調査>
結果としては「興味あり」が70%、「興味なし」が10%、「あまり知らない」が10%、その他が10%という回答になりました。
このことからも美容師にとって「業務委託」という働き方は馴染みのある存在であり、半数以上の美容師が関心を寄せる雇用形態であることがわかります。
美容師の業務委託に必要な作業・手続きを解説
次に業務委託として独立するために必要な作業や手続きについて解説します。
雇われ時代に無かった作業として、それまで事業所が肩代わりしてくれていた様々な手続きを自身で行わなければならないことがあげられます。
業務委託で必要になる工程・手続きとしては、主に以下の5つがあります。
① 働くサロンを見つける
② 国民年金に加入する
③ 国民健康保険に加入する
④ 開業届を出す
⑤ 確定申告をする
Step1. 働くサロンを見つける
まずは「業務委託」として働けるサロンを探しましょう。一重に業務委託といっても給与形態や委託される業務の幅、店舗の備品が使えるかどうかなど、条件はサロンによって大きく異なります。
例えば給与は「固定給+歩合制」と「完全歩合制」の店がありますし、店舗によっては自身で道具や薬剤を用意しなければなりません。
複数の候補を比較し、自分の希望や労働スタイルに合ったスタイルを探すことが大切です。JOBOONでも業務委託・フリーランスで働けるサロンを探すことができます。
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Step2.国民年金に加入する
国民として支払い義務のある国民年金もサロン時代は給与から天引きされていました。こちらも自身で市区町村の役場へ行き手続きをする必要があります。
■手続きに必要な道具
・年金手帳または基礎年金番号通知書
・離職・退職証明書
・印鑑
サロンを辞めたタイミングでなるべく早めに手続きを済ませましょう。
Step3.国民健康保険の加入
同様に「国民健康保険」への加入手続きも行わなければなりません。こちらも以前は給与から天引きされていたものを毎月自身で支払うことになります。健康保険に加入していない場合、医療費の全額が自己負担となります。
退職日の翌日から14日以内に住んでいる市区町村に加入届けを提出しましょう。
Step4.開業届を出す
独立し個人事業主として活動を始めたら、一ヶ月月以内に開業届を税務署へ提出しましょう。
開業届とは個人事業の開業を税務署に知らせる書類であり、提出によって青色申告での確定申告ができる(節税面で優遇されやすい)・小規模企業共済に加入できる(退職時や廃業時に給付金が支給される)などのメリットが受けられます。
開業届は事業主としての公的な証明書となるため、社会的な信頼を得るという面でも提出は行うべきでしょう。
Step5.確定申告をする
独立後の必須作業として1年に1度の確定申告があります。これは1月1日から12月31日までの所得を税務署へ申請・納税する作業を指します。所得とは売上から経費を引いた額を指すので、日頃から毎月の収入と物品購入にかかった費用を記帳しておくことが大切です。
また「国民健康保険」「国民年金」「開業届」などは、なるべくフリーランスとして働き始めると多忙になるので、本格的に始まる前にこれらの手続きを済ませてしまいましょう。
業務委託で働くメリット・デメリット
業務委託には多くのメリットがある一方で、サロンに雇用されている時代には抱えていなかった大きなリスクや懸念点もあります。実際に業務委託としてスタイリストを始めたけれど、やはり辛くなって雇われに戻ったという方は少なくありません。
あなたが業務委託に「向いているか、向いていないか」を判断するために、メリットとデメリットをそれぞれ把握しておきましょう。
メリット1. 1人のお客様にじっくり向き合える
サロン美容師と違い、個々のお客様に最初から最後までマンツーマンで接客できるのが業務委託の特徴です。
シャンプーから最初のヒアリング、施術もすべて自分が担当するため、お客様からすれば「すべてを一人のスタイリストが担当してくれた」と満足度や信頼度があがりやすくなります。実際「自分のお客様を大事にしたい」という理由で、フリーランスを検討する美容師は少なくありません。
現時点で「掛け持ちばかりで個々のお客様に、十分な時間が割けていない」ことに不満を抱いているならば、業務委託になることで解消することができるでしょう。
メリット2. 努力次第で、上限なく稼げる
「稼ぎたい」と思えば、努力次第でいくらでも収入をあげられるのも業務委託の特徴です。
業務委託ならば1カ月にどれだけ働くか、どれだけ接客人数をこなすかを自分で調整することができます。また売り上げが給与に反映されやすいので、自分の注力次第で収入をあげることが可能です。
実際、JOBOONで業務委託の美容師に給与について質問したところ、3名中全員が「独立してからの方が給与があがった」と回答しています。
自己管理が得意で地道に努力できるタイプであれば、自分の裁量で収益を上げられる業務委託の働き方は向いているでしょう。
メリット3. 勤務時間や休日を好きに決められる
業務委託であれば、勤務時間や出勤日数を自由に決めることができます。
個人事業主になると雇用される立場ではなくなるため、労働時間や勤務日は自身の判断で決められます。
「土日もシフトに入らなければならない」「遅くまで残業しなければならない」といった悩みからも解消されますし、予定に合わせて「稼働の多い月」と「休暇の多い月」をつくることも可能です。
プライベートを大事にしたい、副業をしたい、常に時間を自由にあけられる環境でいたいという方には大きなメリットと言えるでしょう。
メリット4. 理不尽な残業や業務、ノルマに追われない
業務委託の場合、美容室との契約で取り交わしのない業務はする必要がありません。
よって契約書の内容に記載がない限り、時間外の労働や自分の業務以外の仕事(サロンの掃除や備品発注、後輩指導など)に時間を奪われることなく、自身の仕事に集中することができます。
また店舗に所属すれば「売上目標」や「ノルマ」が課せられることも多いですが、業務委託であればすべての業務を自分で管理しているので、特に店舗から売り上げについて口出しされることはありません。
メリット5. 人間関係の煩わしさが無くなる
業務委託は基本的に個人プレイなので、密な人間関係に悩まされる心配がありません。
先述したように接客も常にマンツーマンで、誰かの業務を肩代わりしたりあるいは誰かに業務を頼んだりという過程がありません。よって必要最低限のコミュニケーションで仕事をこなすことが出来ます。
「美容師という仕事や接客は好きなのに、社内の人間関係が煩わしい」というタイプは、業務委託やフリーランスという働き方は向いているでしょう。
デメリット1. 税金や保険の手続きを自分でしなければならない
次に業務委託美容師のデメリットをあげていきます。
1つ目のデメリットとしては、確定申告や社会保険の加入といった「それまで事業所がやってくれていた手続き」を自分でしなければならないという点です。
最初は不明な点も多い為、いったい何の手続きが必要か、提出期限はいつまでかなど要点をよく把握しておきましょう。
デメリット2. 集客が無ければ、まったく収入がないリスクもある
先ほど「努力次第で上限なく稼げる」と書きましたが、逆にいえば集客不足やシフトを減らすことで収入が減るというリスクもあります。
雇用契約のときは固定給として最低限の給与が保証されていましたが、業務委託となれば給与の100%が「自分の売り上げ」に比例するので、売り上げが0なら収入も0となります。
収入が0は極端な例ですが、仮に怪我や病気で働けなくなれば考えられないリスクではありません。
「給与の安定性」を確保するためには、雇用契約と同様のスタンスでは上手くいかないことを肝に銘じておきましょう。
デメリット3.常に自主的に学び、知識や技術を取り込む必要がある
個人プレイだからこそ、常に自主的に学び続ける意欲も必要です。美容分野は最新技術やトレンドのキャッチが命綱なので、日常的にアンテナをはり自己研鑽の時間を設ける必要があります。
サロンであれば店舗ごとに勉強会やセミナーの機会があり、技術面で不安があれば先輩に相談することも可能でした。しかし業務委託となるとすべてを独学で補う必要があります。
成長意欲が低い、あるいは自己管理が不得手なタイプであれば、常に自主的に学ぶ機会を持つことはメンタル的に辛い作業かもしれません。
デメリット4. 人間関係が希薄化し、孤独を感じる可能性も
メリットでお伝えした「人間関係の煩わしさから解放される」ということは、言い換えれば「仕事上の人間関係が希薄化する」ということでもあります。
自分の仕事のみに集中できるということは、一方で他の美容師と関わる機会は必要最低限になるということでもあります。
「お客様だけに集中したい」「人と関わるコミュニティが別にある」という方であれば問題ないでしょうが、「チームワークを大事にして働きたい」「職場で密な関係を築きたい」というタイプであれば、孤独さを感じる場面は多いでしょう。
まとめ
今回は美容師の「業務委託」という働き方に焦点をあてて解説してきました。いかがでしたか?
フリーランスとして働くことは自身の裁量が増える分、労働スタイルから接客、各手続きまですべてを自己判断で行わなければなりません。業務委託のメリット・デメリットと自身の性格をよく吟味した上で、自分に最も合った労働スタイルを選択してくださいね。
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