美容師に本当に必要な会話術 | 会話の苦手意識は関係ない?
サロンで活躍する現役美容師50人に、「お客様との会話は得意か、それとも不得意か?」という質問をしてみたところ、以下のような結果になりました。
――得意 : 25人
――不得意 : 20人
――どちらでもない : 5人
アンケート結果からも分かるように、お客様との会話が不得意だと感じる美容師は意外と多く、上記のような悩みを抱えています。
- ・お客様との会話のネタが分からない
- ・お客様との会話がうまく続かない
- ・元来人見知りで、どうしても緊張してしまう
- ・カットやカラーに集中して会話どころではない …etc
「自分もそう!」と思わず頷きたくなるお悩みも、上記にあるのではないでしょうか?
ただ、美容師がお客様との会話に苦手意識を持っているかどうかは、実は大きな問題ではありません。
会話が得意な美容師、そして会話が不得意な美容師、それぞれ自分に合ったコミュニケーションを試みればいいのです。
今回は、お客様から好印象を持ってもらうために”本当に必要な”会話術とは何か、実際の美容師からの意見をもとにまとめてみました。
美容師の会話に必要なのはネタではなく、おもてなしの心
まず、「どうして美容師に会話は必要なのか?」を改めて考えてみましょう。
美容師の仕事は接客業であり、会話は接客の基本です。そのため、会話が必要か否かでいえば、もちろん必要ということになるでしょう。
ただし、”会話をするために、会話をする”というスタンスではいけません。
美容師の会話に必要なのはネタの数や面白さ、場の盛り上がりではないのです。
“お客様に居心地の良さを感じてもらうために、会話をする”と考えれば、ただ単純に話好きであればいいという訳ではないことに、気付くのではないでしょうか?
常におもてなしの心を持って、お客様が居心地いいと感じる会話を目指しましょう。
そのためには、お客様がどんなコミュニケーションを求められているのか、しっかりと”観察する眼”を養うことがポイントです。
美容師の会話術に欠かせないのは空気を読むこと
まずは先述したように、美容師は1人1人お客様を観察し、どのような距離感でコミュニケーションを取ることが望ましいかを、きちんと考える必要があります。
ひと言でいうと、“空気を読む”ということです。
お客様の声のトーンや鏡越しの表情、身振りなど、何気ないところでお客様はサインを出しています。同じお客様でも、日によってテンションが異なる場合もあるでしょう。
何気ないお客様の様子をキャッチして、「少しこちらから話を振った方が、リラックスしてもらえそうだな」、あるいは「あまり話しかけてほしくない雰囲気だから、お客様が話をされるまでグイグイ話しかけないようにしよう」などと、適宜対応を変えます。
もちろん、ドンピシャでこれらの推測が必ず当たるとは限りません。
しかし必ずしも正解ではなくとも、「美容師が自分に心遣いをしてくれている」という事実は、意外とお客様に伝わるので、気にしても無駄だということはないのです。
美容師がお客様といい会話をするための3つのコツ
天気のことや季節のことなど、まずは無難な話題で場を持たせることも有効ですが、そう何度も使える話題ではないですし、あまり話も広がりません。そこで、以下をご覧ください。
<美容師が好印象を持たれやすい3つの会話術>
- 【1】自分の話をする
- 【2】お客様の興味・関心があることを聞く
- 【3】話の”掴み”から関連する話題をつなげる
これらは、お客様に居心地の良さを感じていただくための会話に必要な、3つのコツです。
来店してきた時のお客様の様子を見て、どんなアプローチがよいか考えてみましょう。
【1】自分の話をする
新規のお客様や、緊張している様子のお客様には、まずは自分から心を開いて話をしてみることがポイントです。
美容師の仕事に限らず、自分の得意なことや好きなことを話してみましょう。
同調してもらえて話が広がったり、「○○さん(お客様)は好きなことありますか?」と話を振りやすくもなります。
美容師としてだけでなく、人間として興味を持ってもらうためのいいキッカケになると思われます。
【2】お客様の興味・関心があることを聞く
美容師は、話上手よりも聞き上手になることが大切です。
先述したように、何かキッカケがあってお客様が話を始めてくれたら、しっかり耳を傾けましょう。
お客様が自発的にしてくれる会話には、お客様を理解するための要素がたくさん詰まっています。
【3】話の”掴み”から関連する話題をつなげる
会話は数を打つ(ネタを多く振る)よりも、1つの話題を掘り下げてつなげていくことをオススメします。
例えば、「寒いですね」という会話の始まり方なら、その後に「寒いのと暑いのどっちがツラいですか?」、「寒さの対策、いいのないですか?」などと、つなげていけます。
新たな話題を振り続けるよりも、上記のようなイメージで1つの話題をつなげていくことを意識した方が、不自然のない会話ができるのです。
ただ1つの話題に固執しすぎても、質問攻めのようになってしまってお客様は疲れてしまうので、何度か会話のラリーをしたら引き上げて大丈夫です。
美容師が会話のネタにしてはいけないこと
会話は基本的に、お客様をおもてなしすることが前提であれば、自由に展開して構いません。
しかし、人を問わず美容師からは話題にしてはいけないこともあるので、配慮が必要です。
美容師が率先して会話のネタにしないほうがいいのは、お客様のパーソナルな部分についてです。
- ・結婚していますか(子どもはいますか)
- ・兄弟はいますか
- ・仕事は何をされてるんですか
- ・野球チームはどこを応援しているんですか …etc
一見どの話題も特別おかしくはないように思えますが、これを言われることで傷ついたり、気まずい思いをしてしまうお客様が一定数いるかもしれないことを踏まえると、避けるべきなのです。
例えば、兄弟は昔いたけど、亡くなったかもしれません。仕事を最近やめて、新しい仕事探しがうまくいっていないかもしれません。
お客様から気さくに話題にされない限り、パーソナルなことは聞かないようにしましょう。
会話が得意・苦手な美容師が、会話で気を付けるべきこと
この記事の冒頭で、会話に対する苦手意識は会話の上手い・下手にさほど関係ないと述べました。
会話が得意だと思っている美容師、そして会話が苦手だと思っている美容師には、それぞれ気を付けるべきポイントがあり、それをクリアできさえすれば”会話上手”に大きく前進できます。
会話が得意な美容師は自己中心で盛り上がることに注意
会話が得意だと自覚している美容師は、いわゆる”話好き”であることが多いです。
しかし、自分が話をできることだけに甘えていると、自分だけ盛り上がって会話が成立したようになるケースがあり、肝心のお客様が置いてけぼりになってしまいます。
お客様の様子にはきちんと目を配り、話をしたい雰囲気ではなさそうと感じたら、一歩引いて聞き手に回りましょう。
また、自分とお客様が2人とも盛り上がっている時、ついつい大声になり他のお客様の迷惑に居心地の悪さを与えてしまうケースがあるので、気を付けましょう。
会話が苦手な美容師は表情をこわばらせないように注意
会話が苦手な美容師は、無理に続かない話題を振り続けるよりも、カットやカラーに集中しながら聞き手に回ることがオススメです。
ただし気を付けたいのは、静かにしている間に、例え緊張していても表情をこわばらせないことです。
まったくお客様と目を合わせず表情が固い美容師は、お客様の立場ではどうしても不愛想に映ってしまいます。
話をたくさんしないにしても、常に柔らかい表情を心がけながら、鏡に映るお客様と目を合わせて質問したり相槌をうったりして、安心感を持ってもらいましょう。
まとめ
以上、美容師に本当に必要な会話術について、まとめました。
様々なことに興味を持ち、会話の引き出しを増やすことも重要ですが、それよりもまずその時々のお客様に合わせた、心地の良い対応をすることが大切なのです。
“会話に苦手意識がある”イコール”お客様におもてなしができない”という訳ではないことは、この記事の中で分かったかと思います。
会話が苦手なら苦手なりのやり方で、お客様に居心地のいい空間を提供することは十分に可能なのです。
ここまで話題にしなかったことで、お客様とのコミュニケーションに役立つのは、カルテとは別に「お客様ノート」を作ることです。
プライベートな話をされる方なのか、どんなことに興味があるのか、今日はどんなお話をされていたかなど、気付いたことを簡単に記録しておきましょう。
「前、○○のお話をされていましたが、あれからどうですか?」というような、”続き”の話ができると、『自分の話を覚えててくれたのか…』と、好印象を持ってもらえる可能性が高いです。
自分は会話が得意だと思う、あるいは苦手だと思うという意識にはとらわれず、常にお客様の立場に立ってアプローチの仕方を考えることで、会話のスキルは徐々に上がっていくかと思われます。
今1度、自分の美容師としての会話のスタンスを見直して、会話術の向上のために工夫・改善できるところはないか、探してみましょう。
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